肩こり
肩こりは、腰痛とならんで日本人が訴える症状の最も多いもののうちの1つです。特に、近年のパソコンの普及や長時間のデスクワーク、さらに複雑化する現代社会において、精神的な緊張を強いられ、肩こりに悩まされる人は増加する一方です。
では、どうして人は肩こりになるのでしょうか?
原因は様々で、内臓からくるものや同じ姿勢をとり続けることによって起こる血行不良、頭痛や目の疲れからくる場合、ストレス、運動不足などが考えられます。
東洋医学では、どのように考えるのか?
東洋医学では、肩こりは“経絡を走る気血の流れ”が滞ることによっておこると考えられています。
経絡とは、東洋医学独特の言葉で、古来より人体には、頭のてっぺんからつま先まで縦横無尽に「気と血と水」が流れるラインがあると考えられており、この流れがスムーズにいかなくなると、血行不良となり、こりと感じるわけです。具体的にいうと、次の4つに大別できます。
1)気滞タイプ
これは、仕事でストレスがたまっていたり、イライラばかりしていると、気のめぐりが悪くなり、凝りや痛みを感じやすいタイプです。凝る部分が一定せず、症状もひどくなったり軽くなったりすることが多いのが特徴です。
2)瘀血(おけつ)タイプ
これは、血の巡りが悪くなって起こるタイプです。特徴としては、固定的で刺すような痛みが特徴であり、ひどければ触られるのも嫌がる人がいます。また、唇や舌質が暗紫色で、ちょっと打っただけでもアザや内出血がしやすく、静脈瘤、痔疾などがある方はこのタイプです。
3)肝陽上亢(かんようじょうこう)タイプ
赤ら顔で目が充血し、めまいや耳鳴り・頭痛など頭部の症状を随伴するタイプ。上に症状が集中するのは、肝気鬱結により陽が亢進しすぎるためである。他にも、ほてりや不眠、口苦などの症状も見受けられる。
4)水湿タイプ
これは主に体内の水分やリンパ液の量が多すぎてうまく流れずにおこるタイプである。いわゆる“水毒”と呼ばれるもので症状的には、重だるいとか足のむくみ・雨の日やその前日になると調子が悪くなるなど天候に左右されやすいのがこのタイプの特徴です。
以上のタイプによりツボを使い分け、滞っている経絡上に鍼やお灸をすることにより、うっ滞がとれ、筋肉の緊張がほぐれ、やがて凝りが和らいでいくのです。
また、当院では肩こりも全身病として捉え、治療致します。大抵の患者さんは、肩こり以外でも上記にあげたような頭痛や眼精疲労、冷え性などといった症状が随伴している場合がほとんどで、逆にこれらが原因となって肩こりになる場合があるので、これらの症状も合わせて治療することにより、効果がより顕著になります。
ポイントとしては、肩や首周辺だけに鍼や灸をしても、またすぐに元にもどってしまうことが多く、手や足などにも打つことによって、全身の気血の流れを良くすることが大切となってきます。
どのようなツボが効果的か?
- 天柱(てんちゅう)・・・後頭部、盆の窪から指2本分、外側にいった所。眼精疲労や不眠にも効果あり。
- 風池(ふうち)・・・天柱からやや上で指1本分外にいった所。
- 肩井(けんせい)・・・首の根元と肩先を結ぶ線の中央。一番こりやすい所。他に首の疲れや腕のしびれなどにも効果あり。
- 肩外兪(けんがいゆ)・・・第1胸椎棘突起の下で両側へ3寸いった所。
- 天宗(てんそう)・・・肩甲骨のほぼ真ん中あたり。ここは、上半身の宗気が集まるところ。
- 膏肓(こうこう)・・・第4胸椎棘突起下の外方3寸。肩こりや五十肩にはもちろん、気管支炎や心臓疾患にも効果大。
- 天容(てんよう)・・・下顎角の後ろで、胸鎖乳突筋の前縁に取る。
- 扶突(ふとつ)・・・胸鎖乳突筋の前縁筋中に取る。他に、のどの異常や咳にも効果がある。
- 缺盆(けつぼん)・・・鎖骨上部中央の陥凹部。押すとかなりの圧痛がある。上肢の神経痛やマヒにも効く。
- 合谷(ごうこく)・・・手の甲、親指と人差し指のまたの間。肩こりの他に、頭痛・歯痛・めまい・眼精疲労・ニキビなどにも効果あり。首から上の症状に万能なツボ。
- 外関(がいかん)・・・手の甲側、手首の真ん中から上2寸いった所。