四十肩・五十肩
一般に四十肩・五十肩と呼ばれていますが、正式な病名は「肩関節周囲炎」といいます。関節の周りにある組織の変化や炎症などによって、肩に痛みがでる病気です。肩関節の動きをつかさどる筋肉のうち、大切な4つの筋肉(棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋)が骨に付着する部分を“腱板”といい、この腱板は上腕骨の上の部分についています。(図参照)
年齢とともに、この腱板に炎症がおきたり、あるいは腱板の上にある袋(肩峰下滑液包)に炎症や癒着がおこると、肩の痛みや動きの制限が発生します。ちなみに、五十肩が腕や肩を動かしにくくなるのに対し、頚肩腕症候群は、特に動きに制限があるわけではなく、むしろだるさやしびれなどといった症状が主となります。
症状は?
肩を動かすと痛みがおこります。特に腕を横に上げる動作や後方に回す動作(ファスナーの開閉やエプロンの紐を結ぶ)の時に強く痛みます。何もしなくても痛む(自発痛)、就寝中に痛む(夜間痛)、あるいは患側を下にして寝てると痛みのために目が覚める、などというのも特徴の1つです。
原因と治療法は?
現代医学では、一種の老化現象として捉えられています。加齢とともに人は、骨・筋肉・血管・神経などといったあらゆるものが弱くなったり、摩耗したり、あるいは分泌量が減ったりします。自転車に例えるならば、さびついたり、油切れとなってギシギシいうのと一緒です。つまり“誰にでも”起こりうることなのです。
東洋医学では、老化とともに肩関節周囲の“気血の流れ”がスムーズにいかなくなり、あるいはその部分が冷えて“気血の滞り” がおきて痛みがでると考えられています。こういう時に、鍼や灸で刺激を与えると、血行が促進され「流れ」がスムーズになり、痛みが取れていきます。
また、鍼や灸は痛みを抑える物質や免疫機能を上げる物質を生じさせます。さらに、骨と骨を支える筋肉や靭帯、関節などにも効果的に作用します。このような働きにより、症状がかなり緩和されます。
効果的なツボは?
- 肩りょう(けんりょう)・・・腕をに持ち上げ、肩関節の前後に現れるくぼみのうち、後ろのくぼみ。
- 肩貞(けんてい)・・・脇の下と腕の付け根の交わる所。押すとかなりの圧痛がある。
- 天宗(てんそう)・・・肩甲骨の中央にあるくぼみ。
- 肩井(けんせい)・・・首の根元と肩先を結ぶ線の中央。他に首の疲れや腕のしびれなどにも効果あり。
- 肩ぐう(けんぐう)・・・肩を真横に上げると肩先にできる筋肉のくぼみ。
- 雲門(うんもん)・・・鎖骨外側のすぐ下のくぼみ。腕の付け根の痛みを和らげる。
また、鍼灸には遠隔治療というのがあり、これは同じ経絡なら患部から離れているツボに鍼やお灸をしても、同等の効果が得られるというものです。
例えば、上記にある“肩井”は胆経という経絡に属するので、足にある同じ胆経の“陽陵泉”や“懸鐘”というツボを選択し、治療を行います。
肩が痛いのになぜ足に鍼をして効くかというと、これは津波の原理に似ていて、最初小さかった波が距離を追うごとに高くなる、つまり同じ経絡ならより遠い所からうまく気血を流してやれば、局所の流れがスムーズになるというわけです。
最後に
四十肩は、基本的に冷やすと悪化するので、急性の場合以外はなるべく温めるようにします。また、症状がある程度落ち着いてきたら、痛くない範囲でいいので少しずつ動かすようにしましょう。